新潟県立長岡農業高等学校 特別授業
明治41年(1908年)、古志群立上組農学校として開校した長岡農業高等学校。地域では「農高」の愛称で親しまれています。
今年度、創立110年を迎えた伝統校である農高。「地域とともに歩み続けて110年 ~新たなる伝統を築け~」のスローガンのもとさまざまな活動をされています。
そのひとつに組み込んでいただいたのが、越後川口生ハム塾の監修者でもある神谷英生シェフとの特別授業です。
対象となったのは農業生物の栽培や飼育・生産に関する知識と技術の習得を学んでいる生産技術科の2年生。その中でも動物の飼育や畜産物の利用を中心に学ばれている動物科学コースの生徒さんです。
以前、神谷シェフと長岡の精肉店を訪ねたときに、農高生が手掛けた放牧豚が商品となって販売されていました。若い料理人の人材育成にも力を入れていて取り組んでいる神谷シェフは、「この豚肉を育てている高校生と一緒に何かできないか…」とずっと模索していました。
そして川口地域在住の農高卒業生から学校との橋渡しいただき、今回、夢のような授業が実現したのです。
まずは、事前にフランス料理のイメージを生徒参加からお聞きしました。(上の写真です)
・フランス料理 ー お高い - 食べるの難しい - 盛り付け少ない
・フランス料理 - 熟成 - ジビエ - いのしし - くせがある
というようなイメージをもとに神谷シェフは当日の授業の組み立てをします。
農高の生産技術科の櫻井先生から、
「豚は今出荷できるものがないんです。鳥も卵を取っているので出せないのですが。
あとはシャモならいるにはいるのですが、、、 1年以上飼っていて老鶏になっていてますが大丈夫でしょうか?」
神谷シェフからは「大丈夫ですよ!今回シャモでいきましょう!!」と二つ返事いただき
櫻井先生からシャモ4羽を東京の神谷シェフの店にお送っていただきました。
授業当日はシェフが下準備したシャモを、調理実習室で生徒さんに仕上げてもらいます。
シャモはもともと闘鶏で使われていたトリです。ほかのトリに比べて大型で筋肉質。その分、身がしっかりして味が濃いのが特徴です。
しかも、平飼いでしっかり運動させて育てていたのでしょうし、なにより1年以上肥育された老鶏です。
神谷シェフいわく思っていた以上に筋肉質で繊維が強く弾力があり、丸一日低温スチームで煮込んでもなかなか柔らかさがでず、結局倍の48時間煮込んだそうです。
上の写真は調理実習の材料です。
シャモのモモ肉はブイヨンで煮込み「ドゥミ・ドゥイユ(鶏の皮と身の間にトリュフを挟んだ伝統的な料理)」本来なら黒トリュフと合わせますがこちらは省略して仕上げます。
手羽先の「コンフィ」、その他の部位で作った「ブーダンブラン(白いソーセージ)」は温めるだけ状態です。
その他にも農高の卵、食品科学科が商品化しているリンゴジャムも並んでいます。
まずはシャモガラでとったダシだけのブイヨンを味見します。
ガラと香味野菜だけですが、その美味しさに驚きです。
その後、塩をひとつまみ加えるのですが、味の変化に再びびっくり。塩も村上の藻塩、フランスのブルターニュの塩、そしてドイツの岩塩の3種類を用意してそれぞれの味比べです。
さて調理実習ですが、シャモのモモ肉を大胆にブイヨンの入った鍋で煮込みます。
その間に添える野菜の下処理です。
プロの料理人から直接教わる、貴重な時間です。
しかもメインの材料となるものは自分たちで育てたもの。 「育てる」て「食べる」というすべての流れに係れる、「いのち」と向き合う農高での授業。
鶏の皮と身の間にトリュフを挟んだ伝統的な料理。
ひとつひとつの作業に質問がとびます。生徒さんの熱心さに圧倒されます。
「スクランブルエッグ ブラウンマッシュルーム風味」は、
生徒さんに調理してもらう予定でしたが、時間の関係で神谷シェフのデモンストレーションを見てもらいました。
食事中もさまざまな質問攻めです。生徒たちが普段疑問に思っていたカフェ、ビストロ、レストランといったフランス料理店の違いから、調理法や食材についてなどひとつひとつ丁寧に答えていきます。
11時20分からお昼の時間も使い14時40分まで、3時間以上休憩時間もなく熱い授業は、おいしく楽しく学びある時間となりました。
さらに、生徒さんからは次は「熟成肉で」「生ハムを仕込んでみたい」などリクエストもいただき、次回もまた農高での授業を行う約束までしてきちゃいました!
今回の授業実現に長岡農業高等学校の先生方にさまざまなご配慮をいただきました。
神谷シェフ、私たち越後川口生ハム塾にとっても大変貴重な時間となりました。
みなさまに感謝いたします。
次は、熟成をテーマに授業できる日を楽しみにしています!